サラサラで純白な毛並みが美しいマルチーズは日本ではポピュラーな犬種です。気品があり温厚なマルチーズを一度は飼ってみたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では「マルチーズを飼いたいけど、自分に飼えるのか分からない」という方や「マルチーズと生活を始めて更にマルチーズの事を知りたくなった」という方のためにマルチーズの性格やカラーバリエーション、平均寿命などが一目でわかるようにまとめました。この記事がマルチーズについて詳しく知りたい方や犬種選びに迷っている方の参考になれば幸いです。
マルチーズはどんな歴史をもつ犬?
マルチーズはヨーロッパで飼育された愛玩犬としてもっとも古い歴史をもつ犬種であると言われています。
歴史が古いためマルチーズが発見された確実な記録や歴史はまだ明確にされていませんが、ヨーロッパで5世紀頃に作られたとされている壺や皿にはすでにマルチーズのような犬種が描かれています。
マルチーズの墓標が建てられていることやエジプトの王がマルチーズに金で出来た器で食事を与えていたという逸話もあることからマルチーズが貴族の間で古くから愛されていることが証明されています。
14世紀初めになるとイギリスにはじめてマルチーズが持ち込まれ、貴族の間で抱き犬として一大ブームとなりました。特にヘンリー8世はマルチーズを溺愛していたと言われています。
日本では1970年代に毛色が白色の犬がブームとなり、スピッツの流行に続きました。
マルチーズは日本で1968年から1984年まで16年間飼育頭数ランキングがトップとなっており、現在でも人気の高い犬種となっています。
マルチーズを飼う時の準備と心構え
マルチーズの特徴であるサラサラとしたシルクのような毛並みは絡まりやすいため、毎日のブラッシングや毎月のトリミングが必要です。また、眼の周りの毛が茶色くなる涙やけを発症しやすい犬種でもあるため、純白な被毛を継続するためには良質なフードや涙やけ対策に有効なサプリメントを与えることも大切です。
マルチーズはトイプードルやヨークシャテリアと同じくシングルコートの犬種となっており、寒さや暑さに弱いため夏場の冷房や冬場の暖房は欠かせません。そのためマルチーズは他の犬種に比べると比較的お金や時間が多く必要な犬種だといえるでしょう。
また、華奢で骨が細いため、ソファーやベッドなどから飛び降りたり小さな子供が落としたりしてしまうことで骨折や脱臼に繋がる可能性もあるので注意が必要です。足に負担をかけないようフローリングにはカーペットを敷く、ソファーやベッドにはスロープをつけるなどマルチーズを迎える前に準備しましょう。
マルチーズのサイズ
マルチーズのサイズは小型犬に分類されます。
体重はオスの場合1.4kgから3.6kg前後、メスの場合0.9kgから3.1kg前後が理想とされており、体高はオスの場合20cmから25cm前後、メスの場合20cmから23cm前後が理想とされています。
オスよりメスの方が小さい傾向にありますが、個体差によってもサイズは異なります。
毛の長さや色のバリエーション
マルチーズの毛色のほとんどが「ピュアホワイト」と呼ばれる光沢のある純白です。しかし、少数ですがホワイト以外の毛色のマルチーズも存在します。
例えば黄色がかった白色をしている「レモン」呼ばれる毛色や、薄いベージュ色のような「タン」と呼ばれる毛色などが存在します。
血統書団体であるJKCの規定では繁殖を行う場合は「ピュアホワイト」が望ましいとされていますが、他の毛色も個性として認められています。
マルチーズの性格
マルチーズは抱き犬と呼ばれることもあるように、甘えん坊で人懐こい犬種です。人懐こく明るい性格でありながら活発すぎず、警戒心は少し強めですが吠え癖がつきづらいため初心者にも飼いやすい犬種として紹介されることが多いです。
しかし、初心者でも飼いやすい犬種だからといってしつけや社会化トレーニングを全くせずに成犬になってしまうと、人見知りが激しく神経質なマルチーズになってしまう可能性があるため注意が必要です。そうならないためには子犬の頃から外の環境や他の人に慣れさせるなどの社会化トレーニングをしっかりと行いましょう。
また、マルチーズは甘えん坊で飼い主と一緒にいる時間を好む犬種のため長時間のお留守番は負担となってしまう可能性があります。
マルチーズで注意が必要な病気や疾病
マルチーズは他の犬種と比べると病気や疾患を発症しやすい犬種です。その中でも特に多いのが目の病気、骨の病気、皮膚の病気、心臓の病気です。それぞれの主な病気についてご紹介します。
目の病気
・流涙症
流涙症とは涙の産生量と排出量のバランスに異常があり、涙が過剰にでてしまう病気です。流涙症の犬の場合目の周りが常に濡れたような状態になってしまうため、涙やけの原因となってしまします。
外傷やアレルギー、逆さまつげなどが原因で流涙症となっている場合はそれに合わせた治療を行うことで改善することが可能です。
・逆さまつげ
逆さまつげとは本来外側に向いているまつ毛が内側に向いてしまっていることを指します。逆さまつげのほとんどは遺伝性のものだとされています。逆さまつげ自体に異常はないのですがまつ毛が内側に向かっていることで眼球に刺激を与え流涙症や目やに、眼に傷とつける原因となってしまいます。
治療方法としては逆さまつげが原因で出た症状に対して都度治療を行うのがポピュラーですが、逆さまつげが原因で継続的に症状が続いている場合や重度になってしまう場合はまつ毛を毛根から切除する手術を行う動物病院もあるようです。
骨の病気
・膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼は通称パテラと呼ばれる病気です。マルチーズだけでなくトイプードルやチワワなど小型犬に多くみられる疾患で膝のお皿の骨が外れやすくなる病気です。
膝蓋骨脱臼は4つのグレードに分かれており、グレード1の段階ではほとんど症状がありません。しかし年齢を重ねるごとに悪化する可能性があり、悪化すると手術が必要になるため膝蓋骨脱臼と診断されている場合は出来るだけ足に負担をかけない生活をおくることが大切です。
・レッグペルテス
レッグペルテスとは大腿骨の骨盤に繋がっている部分に血液供給が乏しくなることで壊死をしていってしまう病気です。生後4ヵ月から1歳前後の若い小型犬で発症することが多く、原因ははっきりと解明されていません。
症状としては足をあげて歩く仕草や足を痛がる仕草があげられます。症状が軽度の場合であれば薬や運動制限により改善することがありますが、進行すると手術が必要になる可能性もあるため、気になる症状が見られたら出来るだけはやく動物病院を受診しましょう。
皮膚の病気
・マラセチア皮膚炎
マラセチア皮膚炎とは犬の皮膚や耳に常在している酵母菌の一種であるマラセチアが何らかの原因で過剰に繁殖し、赤くただれかゆみがでてきます。
マルチーズは毛が長くたれ耳のため、耳の通気口を防ぎマラセチア皮膚炎になりやすい犬種です。またデリケートな犬のためストレスから四肢をなめるのもマラセチア皮膚炎の原因となるでしょう。
・アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とはダニやほこり、花粉などアレルゲンにより過剰な免疫反応がおこる病気です。遺伝的な原因が大きいとされており、アトピー性皮膚炎を持つ犬は若いうちから発症する可能性が高いとされています。
症状としてはアレルギーに反応しかゆみや皮膚炎が酷くなったり治まったりします。完治は難しいとされているためかかりつけの動物病院と相談をしながらうまく付き合うことが大切です。
心臓の病気
・僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症は心臓にある「僧帽弁」という弁が何らかの原因で変性し、血液が逆流してしまう病気です。主に10才以上の小型犬に発症しやすい病気といわれており、マルチーズも発症しやすい犬種の1つとされています。
症状としては軽度の場合息苦しさやゼーゼーとした荒い呼吸が見られ、重度になると呼吸困難やチアノーゼとなり命を落とす危険もある病気です。僧帽弁閉鎖不全症を発症すると完治は難しく、薬を使用しながら負担を軽減させ進行を遅らせるような治療がメインとなります。
その他にも先天性門脈シャント、水頭症、白内障、外耳炎などもマルチーズに見られやすい病気とあげられます。1年に1度は健康診断を行うなど病気の早期発見、早期治療を心がけることが大切です。
マルチーズは怪我をしやすい?
気品のあるシルクのような長い被毛が特徴のマルチーズですが、体や足は華奢な子が多いです。そのため、ちょっとしたことが骨折や脱臼に繋がりやすく怪我をしやすい犬種といえるでしょう。
また、膝蓋骨脱臼やレッグペルテスなど足に関する遺伝的疾患を発症しやすい犬種でもあるため、マルチーズを迎え入れる際は足に負担をかけない環境づくりを心がけましょう。
具体的には床がフローリングの場合はカーペットやジョイントマットを敷く、ソファーやベッドにはスロープをつけるなど対策をする必要があります。
また、小さくて抱っこが好きなマルチーズは小さい子供に抱っこされている時にピョンと飛び降りて骨折に繋がるという事故が多いです。小さな子供が抱っこをしている時はしっかりと様子を見ていてあげて下さいね。
マルチーズの平均的な寿命
マルチーズの平均寿命は12歳から15歳程度だと言われています。12~15歳は小型犬の中では標準的な平均寿命といえるでしょう。
また日本で一番長く生きたマルチーズは24歳だと報告されています。マルチーズはかかりやすい病気や遺伝的な疾患が多い犬種のため、体調管理に気をつけることが長生きの秘訣といえるでしょう。
1年に1度は健康診断をうけ食べ物や生活環境に気をつけることで、愛犬が1日でも長く健康で幸せな生活を送れるようにサポートしてあげることが大切です。
マルチーズを室内飼いするときの注意点
前提としてシングルコートで暑さ、寒さに弱く華奢な体格のマルチーズの外飼いはほぼ不可能といっても過言ではないでしょう。
マルチーズを室内飼いする際の注意点としては、華奢な体格から骨が細く骨折をしやすいため、足や骨に負担をかけないように気をつけた環境づくりが大切です。また、暑さ寒さに弱いので室内であっても夏場や冬場は必ずエアコンをつけ1年中室内を快適な室温に保ちましょう。
甘えん坊で一人が苦手な子が多いので、お留守番の少ない家庭が望ましいでしょう。
運動について
マルチーズは貴族に抱き犬として愛玩目的で飼育された歴史を持つ犬種のため、多くの運動量を必要としません。運動量としては室内を動き回ったり室内で飼い主がおもちゃやボールで遊んであげたりするだけで十分に満たせるでしょう。
しかし、室内だけで生活を完結してしまうと、外の環境や他の人が苦手な臆病で神経質な性格のマルチーズに育ってしまう可能性があります。外の環境になれる目的やストレス解消の気分転換の目的のためにも天気の良い日は1日2回10分程度の散歩を行ってあげましょう。
しつけについて
マルチーズは飼い主に対して愛情深く、頭の良い犬種のためしつけにはあまり苦労しないと言われています。温厚で飼い主に褒められることが大好きなので、飼い主がしっかりとしつけを行おうとすればマルチーズはキチンと耳を傾けてくれるでしょう。
しかし、しつけに苦労しないからといって甘やかしすぎると神経質な面が強くなり他の人への吠え癖や噛み癖がつきやすい傾向にあります。社会化トレーニングや日常のしつけはキチンと行いましょう。
また、マルチーズは目や耳が汚れやすいためケアを行えるようにしつけをしておくことも大切です。
お手入れについて
結論から申し上げますとマルチーズはお手入れが多く必要な犬種です。
毛並みはシングルコートのため抜け毛は少ない反面伸びやすく、2週間に1度はシャンプー、月に1度はカットを行うのが望ましいです。シルクのようなサラサラな毛質は絡まりやすいため1日1度丁寧に時間をかけてブラッシングを行いましょう。
また、マルチーズの愛らしい垂れた耳は湿気がこもりやすく更に耳の中の毛が伸びやすい犬種でもあるため、定期的な耳掃除が必要です。耳掃除を行わないとマラセチアや外耳炎など耳の病気になってしまう可能性もあるため1週間に1度は自宅か動物病院にて耳掃除を行いましょう。
他にもマルチーズは涙やけが出来やすく、純白な毛並みは涙やけが目立ちやすいです。1日に数回目の周りをふいてあげることで純白の毛並みをキープすることが出来るでしょう。
白くてふわふわ。陽気で人懐っこさのあるアイドルのような犬種
抱き犬として古くから貴族の間で親しまれてきたマルチーズは陽気で甘えん坊なアイドルのような犬種だということが分かりました。
しかし、白くてフワフワの気品ある毛並みを維持するためには毎日のお手入れが欠かせません。また飼い主が大好きで甘えん坊な性格から、一人暮らしのご家庭や共働きのご家庭には不向きな犬種といえるでしょう。
マルチーズを迎え入れる際はマルチーズのお手入れやお世話にたっぷりと時間をかけてあげられる環境を用意することが大切です。しっかりと環境を整えてマルチーズを迎え入れることで飼い主と愛犬にとって幸せな生活を過ごすことが出来るでしょう。
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